1か月半ぶりとなった本シリーズ!
今回はゲストハウス開業を夢見るときに直面する「経営問題」について、
5年以上経営している立場から、考え方の一部をご紹介できればと思います。

宿泊業界でよく言われる「稼働率」という言葉。
「ゲストハウス 開業」などで検索すると、経営指標として
「稼働率」という言葉が頻繁に出てくるかと思います。
では稼働率とは何でしょうか。
実はこの言葉には、様々な定義があり少し厄介なものだと感じております。
わかりやすく説明する為に、当館の2025年5月の宿泊実績を記しながら、
定義の違いについて書いていきたいと思います。
※例に挙げている5月は、特別良いわけでも悪いわけでもない実績でした。ただゴールデンウィーク繁忙期分が上乗せされているので、いつもの月より2割程度多くなっていると捉えてください。また5月は定休日が7日ありましたので、営業日は24日間として計算しております。
<定員稼働率>
分子:ご宿泊人数
分母:最大定員
当館の場合、分母は「16(人数制限をしている為)」となります。
→5月・当館の定員稼働率は「44.8%」でした。
<客室稼働率>
分子:1人でもご宿泊のあった客室の数
分母:全客室
当館の場合、分母は「5」室となります。
→5月・当館の客室稼働率は「78.3%」でした。
定員稼働率と客室稼働率。
同じ稼働率でも、数字が全然違うことがおわかりいただけるかと思います。

では、定員稼働率と客室稼働率。
どちらがゲストハウスの経営の実情に近い数字なのでしょうか。
ホテルとは違うゲストハウスの特徴として、同じ部屋に他人同士が宿泊する、
「ドミトリールーム」という部屋の存在があります。
極端な話、ドミトリー10人部屋に1人でも宿泊者がいれば、
その客室は稼働しているということになりますので、
仮にドミトリー10人部屋が2部屋(定員計20人)というゲストハウスがあり、
男女それぞれ1人ずつ、計2部屋に宿泊された場合、
定員稼働率は2人/20人=10%ですが、客室稼働率は2室/2室=100%となります。
この場合、実態に即しているのは「定員稼働率」となります。

しかしゲストハウスの中には、個室しかないという場合や、
ドミトリールームはあっても1部屋だけ、といったところも存在します。
仮に、1人でも2人でも金額の変わらない2人部屋が5室(定員計10人)というゲストハウスがあり、
全て1名ずつ、計5部屋に宿泊された場合、
定員稼働率は5人/10人=50%ですが、客室稼働率は5室/5室=100%となります。
1人でも2人でも部屋の料金が変わらないのであれば、
この場合、実態に即しているのは「客室稼働率」となります。

ちなみに、観光庁などの公的な宿泊調査では「客室稼働率」を用いられることが多いです。
宿泊業の大きなウエイトを占めるのはホテルであり、
シングルルームも多いことから、客室稼働率である程度実態がわかるからです。
(全てシングルルームというホテルは、定員稼働率と客室稼働率が同じになります。)
ただしゲストハウスは「ドミトリールーム」が多いという特徴から、
「客室稼働率」で実態を把握することはできず、
とはいえ2名以上泊まれる個室がいくつかあると、
「定員稼働率」で全てを把握するということもまた、難しいということになります。
稼働率という言葉の頭に「客室」がつくのか「定員」がつくのか、
ハッキリしない状態で稼働率という言葉を使うのは、
いかに厄介かという理由がお分かりいただけたかと思います。

稼働率で経営状況を把握できないのなら、どうすれば良いのか。
答えは簡単、「売上高」と「営業利益」を毎月しっかり把握することです。
1組ごとの宿泊料金の積み重ねが1ヶ月の売上高となり、
売上高から「売上原価」「固定費(家賃・人件費・光熱費等)」などを引いたものが
「営業利益」となります。
開業前だとしても一つ一つ試算していけば、売上原価や固定費は
ざっくりと算出できると思いますので、
赤字にならないように、また手元にお金が残るためには、
これだけの売上高が必要だ、という試算をしてみてください。
それが、ゲストハウスの「売上目標」となります。
稼働率という曖昧な定義で考えるよりも、
開業後に目指すべき未来が余程はっきり見えるのではないでしょうか。
※上の表は、当館で毎月管理している収支表です。ご参考までにどうぞ。

今回、運営上の話を「開業マニュアル」シリーズで書いたのは、
開業はゴールではなくスタート、開業するより続ける方が難しいからです。
続けていくためにも、こうした数字の管理はとても重要ですので、
逃げずに頑張ってください!
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