本年の通常国会にて、旅館業法の改正が成立し、
2023年12月より施行されることが決定いたしました。
これまでは旅館業法第5条の規定により、宿側がお客様に対し、原則宿泊の拒否ができませんでしたが、
宿で働く従業員の安全に配慮するという観点から、その点について改正がありました。
当館のみならずホテルや旅館・民宿、更には多くのゲストハウス(民泊は除く)が対象となる法律、
ご宿泊されるお客様にも念のため知っておいて損はない話だと思いますので、
今回はご紹介していきたいと思います。
宿が宿泊を拒否することができるケース
1.特定の感染症の患者(陽性の診断が出ている方)
改正前は特定の感染症の具体例について明記がありませんでしたが、改正後は
【一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症及び指定感染症(入院等の規定が適用されるもの)】と明記されました。
今は五類となった新型コロナや季節性インフルエンザ、また過去に問題となったハンセン病患者などはこれに該当しません。
上記特定感染症の患者が宿泊を希望しても、宿側は拒否することができるようになります。(その時の医療体制の逼迫状況などを考慮する必要はあります。)
2.特定の感染症(上記と同じ)の症状がある方、および濃厚接触者
症状があるだけ、濃厚接触者というだけで拒否されるわけではなく、
宿側が感染拡大防止の為に必要な協力を求め、それに正当な理由なく応じない場合は拒否することができるようになります。
必要な協力とは「近くの医療機関に受診するよう促す」「みだりに客室から出ない」「検温や健康状態のチェック」「その他感染防止に必要な措置」とされております。
コロナ禍で明らかに体調不良が認められるお客様であっても、感染拡大防止の為に必要な協力を求める法律上の根拠がなかったために、多くの従業員が不安な気持ちで接客していたという背景があり、このようになったようです。
3.以下のような迷惑行為を宿側に繰り返し要求する方
迷惑行為の具体例は下記の通りです。
・宿泊料の不当な割引や不当な慰謝料、不当な部屋のアップグレード、不当なレイトチェックアウト、不当なアーリーチェックイン、契約にない送迎等、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為
・自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為
・特定の者にのみ応対をさせる、または特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為
・土下座等の社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為
・泥酔客が長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為
・対面や電話、メールで長時間にわたって、叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為
ここでのキーワードは「繰り返し」という言葉にあります。
お客様が宿に対し最初に上記のような行為を要求した場合宿はすぐに宿泊拒否をすることはできず、
「そうした行為は受け入れられませんが、ご宿泊は可能です。」と一旦は伝えることが必要になります。
それでもなお上記のような行為を要求し続けた場合に初めて、宿側は宿泊を拒否することができるようになります。
宿が宿泊を拒否することができないケース
障がいを持つ方が社会的障壁の除去を求めた場合
障がい者差別解消法による措置になります。
具体的には筆談でのコミュニケーションを求める、車いすの方が入りやすいようベッドなどの位置を変更することを求めるなど。
他にも医療的な介助が必要な障がい者、重度の障がい者、オストメイト、車椅子利用者、人工呼吸器使用者の宿泊を求めることや、介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めることも宿泊拒否ができる条件には該当しません。
かつてハンセン病の元患者がホテルから一方的に宿泊を拒否されたという事件があり、
そのような差別が二度と起こってはならないという意思が表れております。
法改正を受けて
当館では過去に、宿泊拒否に該当するような案件はありません。
(受け入れられない要求がないわけではありませんが、きっぱりとお断りをしたらそれでも繰り返し要求するということはありませんでした。)
そして今後は、法改正によってどんどん厳しく判定し該当する方は拒否をする、ということではなく、
「できることとできないこと」の判断基準をしっかり持って、
お客様からの要求に対して曖昧ではなくはっきりと「Yes,No」を伝えること。
そしてその前段階として、ブログやホームページで正確な情報をわかりやすく発信すること。
老若男女、幅広い層にご利用いただいている当館では多様な価値観があるのは当たり前なので、
多様な意見や要求を尊重しながら、できることとできないことを事前にはっきりとご理解いただき、
その上でご宿泊いただけるように、取り組んでいきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します!
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